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zoom RSS 【763】 酔っ払い(>_<)

<<   作成日時 : 2017/01/23 06:10   >>

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飲酒に寛容だった昭和の時代、不特定多数の人が集まる駅や列車内では、酒を飲んで、人に迷惑をかける人が、今より格段に多かったように思います。

さて、今回のお話は、私が国鉄岡多線で車掌をしていたころのことで、昭和50年代半ばのことです。岡多線は現在の「愛知環状鉄道」の一部です。このうち岡崎〜新豊田間は国鉄線として開業ししておりJR東海時代を経て、新豊田〜高蔵寺間の延長と同時に第三セクター鉄道になっています。
画像
画像は愛知環状鉄道に移行後、2005年に愛知万博「愛・地球博」開催中にJR東海から助っ人として入線した113系です。国鉄時代はその岡多線も私の乗務範囲で、全旅客列車が113系4両編成で運転されていました。(国鉄末期に165系3両に変更されました。)

岡崎を発車した直後に車内に入ると、酔っ払ったオッサンが大声でからんできました。

「俺は切符を持っとらん。金は一銭もない。ゼニ取れるもんなら取ってみろ」
「お客さんはどこまで行くの?」
「三河上郷」(←そこは無人駅)
「困ったねえ。どこから乗ったの?」
「そんなことは知らん。」
「じゃあ住所と名前教えてくれる?」
「いやだ」
といった調子でお話になりません。
そのうちに
「タバコ1本くれ。」
「あいにくタバコは吸わんもんで。」
などとやっていると、ローカル線のお客さんは親切で、困っている車掌に代わって、
「ほら、わしのタバコ1本やるで、静かにしりん」(「しりん」は三河弁で「しなさい」の意味。なお当時の岡多線は禁煙ではなかった。)

とりあえず、静かになったものの、このまま無人駅で運賃を取らずに三河上郷まで乗せてゆけば、他の乗客の手前もあるし、なにかよい手はないかと考えました。もちろん今のように無線はありませんし、乗務員は何事も自分で対処するしかありませんでした。2〜3分おきに駅があり(と、言っても旅客扱いのホーム要員配置駅は皆無)、三河上郷までの十数分の間、ずっと話をしてもまともに通じない酔っ払いに関わっているわけにはいきません。とりあえずタバコでおとなしくしているし、ほかの乗客に迷惑をかけているわけでもないので静観することに。

酔っ払い氏が降りるという三河上郷は高架駅で、車掌がホームで集札をすることになっていました。
画像
画像は現在の三河上郷駅の岡崎方面行ホームです。岡崎方から高蔵寺方を向いて撮影しています。国鉄時代はいわゆる棒線駅で、上下線ともこのホーム(現岡崎方面行ホーム)を使っていました。駅の構造は今でも変わりがなく、列車から降りた人は階段で地上に降り、その際、車掌が集札する位置は画像の階段降り口の柵のあるあたりでした。(国鉄時代に柵はなかった。)
私はそこで運賃を取ることは不可能と考え、芝居を打つことにしたのでした。

三河上郷の高架ホームに到着し、ドアを開けると、酔っぱらいのオッサンは誰に促されるでもなく、自分でフラフラとホームに降りてきました。他に降車客はありません。車内の乗客も車掌がどんな対応をするか見ているはずです。酔っ払い氏と目が合いました。そこで私はその場でオッサンには何も言わず、ドアを閉め、列車がガクンと動き出すのを待って、ホーム上のオッサンに、車内にも聞こえるような大きな声で、こう言いました。
「警察に通報しておいたから、階段降りると下に警察が来てるはずだからね!!」

オッサンは、動きだした列車の乗務員扉から顔を出している私に向かって、
「やりゃがったな!!」
と怒鳴っていましたが、列車は加速してその場を去って行きました。ホームには階段を下りていくのを躊躇しているように見えるオッサンの姿が小さくなっていきました。
もとより無線機などの通信手段はないので、警察が来ているはずもありません。そして高架駅ですから、この階段を降りる以外に駅から出ることはできないのです。
画像
(画像は合成によるイメージです。)

車内で「さきほどはお騒がせして申し訳ありませんでした。」と謝っておき、タバコをくれた乗客にも御礼を言っておいてその場は終了でした。

国鉄名古屋鉄道管理局が職員向けに配った事務用の下敷きが今も私の手元に残っています。そこには、窓口で対応するお客さんを、「いばる人・快活な人・おとなしい人・うるさい人・酔っ払い」とタイプ別に分類して、それぞれの特長と、応対の仕方の例が書かれていました。まあ、その個々についての内容はあえてアップしませんけれど、私は再就職先にもその下敷きを持ちこんで、接客での参考にしていましたが、その簡潔な内容は十分に的を得ていました。

その、下敷きに書かれた酔っ払いへの応対例は、下の画像のとおりでした。
画像

運賃を取れなかった私の対応は正しいとは言えないのでしょうけれど、同行者もいませんでしたから、乗客の協力も得て、酔っ払い様御降りの際にはユーモアを交え、くどくかかわらなかったつもりで、ある意味、このマニュアルどおりとも思えますがどうでしょう???・・・・



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コメント(14件)

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おはようございます。朝から笑ってはいけませんが笑ってしまいました。
ここまでは出来ませんが、芝居を打つのは営業で身に付けざるをえませんでした。対応中の相手にある程度動いてもらうには演技は必要ですからね。今の私もたまにですが酔い客来店応対に手を軽く焼いています。
岡多線は三セク化されてからも乗ったことはありませんが、以前の記事を拝読しても乗客にはヘンな事例が多いような。なお私がこの線区沿線工場向け貨物列車乗務だったら、この日は入れ換え終了までコーヒーは我慢していたと思います。
少し前、ある劇場に行って知ったのですが、昔は観客は屋外の芝に座って劇を観たので芝居になったそうです。
NAO
2017/01/23 08:29
NAO様 おはようございます。
私は職人気質で、まったく営業向きの人間ではないのですが、接客に関わった20代の国鉄時代の経験は、転職先の対外的な駆け引きには大いに活かされたと考えています。どんな企業でも接客上のトラブルには毅然とした応対をするよう形式上のマニュアルは整えてあるのでしょうが、現場の状況は一件ごとに違いますから人相手の仕事は難しいですね。
岡多線ばかりに変な事例があるわけではないですが、昭和50年代に旅客営業を開始したばかりの新線だったので、設備・運転・営業面すべてで合理化され、他線区と勝手が違う線ではありました。
芝というと、ゴルフに行くことを「芝刈り」に行くと言いますが、あれもなるほどと思えます。
しなの7号
2017/01/23 10:12
 こんばんは、しなの7号様。
岡多線も歴史と将来性を考えると三セク化が疑問な線区でした。実態を見ずに輸送密度だけを杓子定規に当てはめた結果です。私的にはこの線と言えば北野桝塚からの自動車輸送のイメージですが隆盛を誇ったのは短期間でしたね。子供の時
ずらりと並んだク5000に次々と乗用車が載せられる写真を見て、「やっぱり貨物列車ってすごいよな」と感激した思い出があります。もう沿線でも知っている人は少ないのでしょうか?
 喫煙者は激減したものの(私も1日30本以上のヘビースモーカーでしたが)酔っ払いは相変わらずです。入庫の時などにグダグダ言われたり起きてくれないと困ってしまいます。近年は女性も多く体に触れざるを得ない時は気を遣います。乗務員はまだましで駅員時代は毎日が酔っ払いとの闘いでした。「駅長を出せ!」と言われる場合が多いのですが、極力自分で対処するようにしていました。乗車券の取り扱いの不満の時は「当駅の規程の担当者です」サービスの不満は「指導駅員です」とか「ただいまの時間助役代行です」などと大嘘をついていました。男性の場合はきちんと説明すると
酔いも醒めてくるのか理解してくれるのですが、鬼門は中・高年女性どう言っても「でもサービス業やろ」「ちょっとぐらいええやろ」と引き下がりません。ある時若いきれいな女性「あの〜ぉ」「はい何でしょう」「切符をなくしてしまったのですが」「その場合はもう一度いただかなくてはいけないのですが・・・」これから気を付けてくださいと言おうとした瞬間、鬼のような形相になり「そんならええわ!」と小銭を投げつけられました。駅員生活5年間ですっかり女性不信になってしまいました。
門鉄局
2017/01/23 22:37
お酒があると鉄道の旅は格段に味わいが増しますが、場合によっては不愉快そのものですね。急行ブュッフェの寿司屋が取りやめになった理由のひとつに酔客の増加があったと読んだことがあります。車内で寿司とお酒なんて憧れてしまいますが、飲酒しない方にはうっとおしい存在だったのではと思います。
なはっ子
2017/01/23 22:50
おはようございます。JR某社の運行情報をPCで見ていると、乗客対応の為遅延発生の情報が時々掲載されていることがありますが、恐らくしなの7号様が対応されたケースと類似の内容もあるだろうと思います。最近の車内トラブルは酔客もさることながら、乗客同士の喧嘩、痴漢行為など警察官対応が必要な事案も多く、幹線でもワンマン列車、無人駅の更なる増加で現場の乗務員さんの負担が増大し大変だなと思います。
サンダーバード46号
2017/01/24 09:35
お疲れ様です。記事を読ませていただきあらためて人を相手にする仕事の難しさを認識しました。国鉄OBの坂本衛さんも書かれていたように1対1のやりとりなら「今日のところはまあ‥」となるが大勢のお客様に見られているのだから正式な運賃、料金を徴収しなかったら苦情が出る。そこで俳優にならないといけないんですね。
鉄子おばさん
2017/01/24 10:11
しなの7号様、こんにちは。
酔っ払いや、正論が通用しない厄介な相手には、口論でねじ伏せる作戦が通用しません。こんな大ピンチ時の『ユーモア』は有効な手段ですね。
ホームで地団駄を踏んでいたであろうオッサンの姿、見たかったです(笑)他の乗客の方々は『オッサン下で御用じゃん』と納得されていたのではないでしょうか。
『嘘も方便』接客業は時として、ひと芝居打つことも必要ですね。
はやたま速玉早玉
2017/01/24 13:08
門鉄局様 こんにちは。
岡多線の自動車輸送を知る人は少なくなったのでしょうね。前にも書いたことがありますが、ちょうどこのころ北野桝塚駅から三河上郷駅の近くまで、当時単線だった複線用地(現下り線)に敷かれた側線に、自動車輸送が縮小され使われなくなったク5000が延々と連なっていてました。

今は鉄道従事者の暴力被害が問題になっていますが、事件にならない言葉の暴力の数は相当なものでしょうね。日頃、私は鉄道を使わなくなって、あまりそういう現場を見なくなりましたが、買い物のためいくつものスーパーをいつも廻っています。多くの店舗が、「お客様の声」の投書を掲示していまして、それを見ると、まったく自己中の困ったちゃんや、気に入らない従業員への嫌がらせ等々、書いた人の品位を疑うような投書が多いのに呆れるやら、丁寧に回答を書かねばならない店長のご苦労を思うやら。接客従事者はみな同じご苦労を味わっていることでしょう。詳細は申しませんが、私も国鉄退職後、多くの「お客様」に鍛えられ?ました(*´Д`) 
スーパーも鉄道も、客層は広く客数も多いですから類似点はあると思うのですが、スーパーのほうが女性の割合が多いですね…。
あと、昔はこの例のように「タバコ一服」で、ちょっと落ち着くケースもあり、それもタバコの効用だったと思うのですが、今はそうもいきませんしね。
しなの7号
2017/01/24 14:44
なはっ子様 こんにちは。
サハシの寿司屋廃止の一因には職人確保の問題以外にそんなこともあったですか。酒と鉄道、自分には切り離せないもので、おとなしく飲みながら車窓を楽しんでいるだけなのですが、これもロングシート車の増加で私みたいな者が飲酒しにくくなってきました。ボックス席でからまれたりすると鬱陶しいでしょうし、これもロングシート化推進の理由の一つなのかもしれません。
しなの7号
2017/01/24 14:45
サンダーバード46号 こんにちは。
不特定多数の人間が狭い空間に集まる駅や車内で起こることは、昔も今も似たようなものでしょうけれど、国鉄時代と大きく変わったのが鉄道会社の対応ですね。駅員自体が最小限の配置ですから、鉄道関係者だけで対応せず、何でも警察の厄介になるようになりましたから、ちょっとしたことでも列車が大きく遅れるようになりました。
この時は遅延なし。もし無線があって指令経由で警察手配をしていれば、被疑者を引き渡し状況聴取で十数分は遅れたでしょう。それと今は、ちょっとしたことでもすぐスマホで撮影され拡散しますから、何事もマニュアルどおりやらざるを得ないでしょうし、現場の方々の苦労は大変だろうなと思います。
しなの7号
2017/01/24 14:45
鉄子おばさん様 こんにちは。
接客の仕事は人目に触れますから、ときにはカッコイイとか思われることもありますが、実際のところよく見えるのは、業務の中のほんの一部分に過ぎないことを感じます。坂本衛さんの著書を読むと、今でこそ笑い話ですが、けっこうきわどい場面を職人芸で乗り切っておられたことが判りますね。
しなの7号
2017/01/24 14:46
はやたま速玉早玉様 こんにちは。
自分は話術に長けていませんので、接客は得意ではありませんでしたが、話がまともに通じない酔っ払いには、まともな応対では切り抜けられないですね。発車した列車の後ろの乗務員室から見えるうちは酔っ払い氏は階段を降りていく勇気がなかったようでしたが、終点新豊田で折り返し、1時間もしないうちに、その駅に戻ってきたのですが、その時にはオッサンの姿はもうありませんでした。
しなの7号
2017/01/24 14:46
しなの7号様 こんばんは。大変ご無沙汰していました。
酔っ払いと聞いて、「俺のこと?」と思った次第ですが、私が見たある酔っ払いのことで・・・。
今から20年ほど昔の「松阪駅」でのことです。年末のボーナスも出て久しぶりに妻と外食をして、ほろ酔い気分で切符を買い改札口へ向かうと、労務者風の酔っ払いのオヤジが若い駅員に絡んでいました。酔っ払いが大声で「なんで金払たのに乗せえへんのや!ここ通せ。怒」と怒鳴っています。駅員さんならぬ駅員君「切符が無ければ入れません。あちらの券売機でお買い求め下さい。」酔「買うたけど、どっかいったんや。やい国鉄。お前とこはどんだけ金くすめるつもりや」駅員「国鉄は10年前に無くなりました。」酔「そしたら、何なんや、ここは国鉄の駅やろ」駅員「だから、国鉄は今はありません。」とこのようなやりとり。知らぬが仏と自動改札に行こうした時、足元に未入鋏の切符があり、私「これ小父さんのじゃないの?」酔「ああ!これこれ。いやーあんたのおかげで助かったわ。この国鉄の奴が金払たのに汽車乗せえへんて」駅員「ですから、国鉄は今はありません。」酔「やかましい。早よ通せ。この国鉄の~$#%!*グワァー・・ペッ」とホームに痰を吐いて多気方面の列車に乗って行きました。私「駅員さんも大変だね。あんな酔客相手にせにゃならんで。」駅員「まあこれも仕事ですから。」と自動改札ならぬ切符に入鋏印を押してもらい亀山方面の列車に乗りました。でもこの駅員君が言った「国鉄は無くなりました。」帰りの列車で複雑な気持ちで反芻していました。
日本国有鉄道ではなく東海旅客鉄道株式会社なんですよね。

2017/01/25 23:11
天様 こんにちは。
酔っ払って恥ずかしい思いをしたことは忘れたいですが、俺のこと?と、ちょっとドキッとするのは酒飲み共通の心理で、お互い様ですね(^^;)
国鉄がなくなって10年経っても、酔っ払い氏には国鉄が生きていたのですね。駅員君はJR新採組で国鉄なんて知らない過去のもの。対する客は酔っ払っていても国鉄がちゃんと頭に染みついていて、国鉄に反応する駅員君とのやりとりが面白いです。同時に「国鉄は無くなりました。」の言葉を自分もサラッと聞き流せないです。

酔っ払いとは違いますが、国鉄時代に切符を買わずに改札を強硬突破?して乗ってきた乗客がいました。その話を来週書きますね。
しなの7号
2017/01/26 10:03

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