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zoom RSS 【773】 命がけの実地訓練?

<<   作成日時 : 2017/02/27 06:40   >>

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ここは中央西線、鶴舞駅。
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私が国鉄の車掌時代、この駅のホームでヒヤッとしたことがありました。
それは夜おそく、153系8両編成の普通列車高蔵寺行に乗務していたときでした。乗降終了後、定刻にドアを閉めたのと同時に、階下の改札から最後部車両に近い階段をホームへ上ってきたオッサンが目に留まりました。そしてドアが閉まったのに列車に向って突進してきました。危ない!と思うと同時に、オッサンは列車の前でピタッと立ち止まり、こんどは体の向きを変えることなく、のけぞるように後方にフラフラよろけながら電車から離れていきました。その足取りからして酩酊状態でした。やれやれと思う間もなく、またピタッと立ち止まって、再び勢いよく電車に向かって直角に、走り寄ってくるとも倒れかかってくるともつかないように両手を前に出して列車に向ってきたのです。とっさに私はブザー合図を乱打(合図の取り消し。この場合、取り消す合図は出発合図)しましたが、ほとんど同時に運転士はノッチを入れており、列車はわずかに動き出しました。酔っぱらい氏はこんどは電車の前でピタッと止まってはくれず、まだほんの低速ながら動きだした状態の電車の車体に両手をつきました。電車は低速ながら動いていますから、手だけが列車の進行方向に持っていかれ、酔っぱらい氏はバランスを崩し、ホーム上に倒れ、そのままゴロゴロとホーム上を2回転くらい列車の進行方向へ転がり、電車も同時くらいに止まりました。
現場に走り寄って、「お客さん大丈夫か!」と寄りかかると、酔っぱらい氏、意外にもスックと立ち上がり、それでも立つとフラフラしながら、「乗せてくれ!!○○だ!○○だ!」と連呼します。怪我はないのかと心配する車掌に、「○○だ!」 どうでもいいからこの列車に乗せてくれと言わんばかりに、閉まっている電車のドアのほうにフラフラ歩み寄っていきます。嘘みたいな話ですが全く無傷のようです。酔っぱらいは転んでも変に体に力が入っておらず自然に転倒するから意外にけがをしないもんだという話を聞いたことがありますが、まさにそのとおり。とりあえず乗務員室ドアからそのまま乗せて、運転士には「電話機にかかれ」という意味の「―・・―」というブザー合図のやり取りをして、車内電話で簡単に事情を説明し発車しました。酔っぱらい氏、その間に勝手に乗務員室から客室に入って空席に座ります。列車を発車させてから、心配してその酔っ払い氏のところへ行くと、「XX駅で降りるでな!」と言って平然とされています。そこで初めて明るいところで酔っ払い氏の顔を見て2度目のビックリ。よく見ると面識がある「国鉄職員の○○さん」ではありませんか。「○○だ!○○だ!」と連呼していたのは、俺だ俺だ!と自分の名前をアピールしておられたのでした。XX駅に着くと最後部のドアから降りた〇〇氏、「ありがとな!」と、何度も繰り返してフラフラしながら、何事もなかったかのように改札のほうへ向かっていきました。
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後で考えると、超低速であっても、ホームと電車の間に体が挟まれていたとしたら、命に関わる人身事故になったのでしょう。また鶴舞駅のホーム上には上屋を支える柱がない構造でしたので、柱などのホーム上にある障害物にぶつかることもありませんでした。そうでなくても転倒したときに頭でもぶつけていたら…と見ているほうとしてはずいぶん怖い思いをしましたが、本人はあの酩酊ぶりではそんなことはたぶん覚えていないのでしょう。「ありがとな!」と、乗せてあげたことには感謝の意を表しておられたものの、列車を停めてしまって申し訳なかったという謝罪する意識はなかったようです。
この○○氏、、一緒に仕事をしたような関係ではありませんでしたが、運動神経がよくないと勤まらない職務をされていましたから、身を以って危険な場合の実地訓練を体験させてくれたと思うことにしました。

ところで、当時の車掌が列車を停める手段は、「車掌弁」を引くのが基本でした。
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その車掌弁で列車を停めた事例については別の機会にするとして、この事例では起動した後ではなかったのでブザー合図を咄嗟に用いました。このときのブザー合図は「支障あり」(・―)を使用してもよかったかとも思えますが、それ以前に、これと似たようなケースで「支障あり」(・―)のブザー合図をしたところ、運転士から指摘を受けたことがありました。「ドアを閉めて支障があるんなら、なんでブザーを乱打しないんだ?」とおっしゃるのでした。
(規定上は合図の取り消し⇒「乱打」)
でも「支障があるのだから(・―)でもいいでしょう?」と言うと、「何でもいいでビビビビビビビ〜とブザーが鳴れば、こっちも何か起こったなとすぐにわかるからすぐ止まるけど、あんな合図(・―)じゃわからん」とのこと。
なるほど、私が先週書いたように、ブザー合図を誤認して誤ってドアを開けてしまった時も、乗降場をはずれたという意味の「・・―」でなくて「ビビビビビビビ〜」と訳が分からないブザーが鳴動すれば異常事態!と察知してドアを開けずに事なきを得たのかもしれないとも思いましたが、運転士側から取り消すべき合図が何もないわけですから、これも私の言い訳にすぎません。

こういう出来事は予測できません。重大事故の一歩手前ですから、ちゅうちょすることなく非常停止手配を取るのは車掌の鉄則です。ホームドアがない環境での列車監視は安全上非常に重要なことで、何度もヒヤリ体験をさせられた身からすれば、白手袋をして颯爽と役者気分で乗務しているわけではないのです。乗客の命を預かる鉄道員の宿命として、判断一つ間違えば法廷の被告人席に立つことになるかもしれず、緊張感を強いられるものです。


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コメント(10件)

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しなの7号様、こんばんは。
酔っ払いのオッサン、難儀ですね。想定外の動きをが原因で事故が起きても100%鉄道会社の責任、理不尽さを感じます。まさか、実地訓練を行うためにわざと酔っ払いのフリをした?
『酒は呑んでも呑まれるな』とはよく言いますが、正にその通り、端に迷惑かけずに楽しく呑みたいものです。

人命を預かるプレッシャーは並大抵ではない、改めて感じます。販売会社に勤務していると金銭事故に直面、例えば閉店後レジ誤差が出てしまうと後味悪く業務終了を迎えてしまいます。1日の最後にアクシデントが起こると嫌なものです…
『終わり良ければ全て良し』でしょうか?
はやたま速玉早玉
2017/03/01 01:23
はやたま速玉早玉様 こんにちは。
まあ100%はないとしても、平成になってからは特に個人の権利意識が強くなって、他人に責任を押し付けるような風潮がありますから、まっとうな仕事をしていても被疑者扱いされるようなことが多いですね。

私は健康上の理由で節酒している身で、気持ち良く酔えるまで飲むことがなくなりましたので、こういう酔い方をして迷惑をおかけすることは「今後も」ないつもりですが、そうでなくても車掌時代には酔っ払いには手を焼く場面に出くわすことが多かっただけに、気を付けていたつもりではあります…???
車掌は金銭も扱いますから、乗務中に命の次に大切な車内補充券の管理にも気を使いました。運転事故も営業事故も関係しますので、何事もなく仕事が終われば気持ちよく飲みたくなったものです。
しなの7号
2017/03/01 09:58
こんばんは。今夜は酒が入らない予定ですが、飲んでいなくとも交通安全には注意しないといけないのに、お酒の後となると更なる自制心が必要ですね。注意力は散漫になって危険度が増す。鉄道会社も大変ですが、相席になったりするのも厄介です。
明るいうちからホロ酔い加減で通勤型車両で煙草を吸うオッサン、空いているのに人恋しいのか隣りに座ってくる酒臭いオッサン、ローカル線最終列車で小駅発車直後、乗り過ごしに気付いたオッサン.....。嘉門達夫さんの歌にもありますが、ホントいろんなオッサンが居るものです。
では私は大丈夫で完璧な人間かと訊かれると...。身に覚えが有ることには有りますが、運輸会社にはお世話にはなっていないし、ても帰宅してから親やヨメはんにごっつう怒られたことは有りまして...。
酒を飲んだときの鉄道の見る目の変わり方については酔っていても結構覚えているものでして、それについてはまた拙ブログで書こうと思っています、気が向いたら。(笑)





NAO
2017/03/01 19:52
NAO様 こんばんは。
だいたいオッサンは飲んでなくても嫌われ者で、私のような挙動不審者は飲んでなくても警戒されます(;´Д`)
道を歩いているだけで、対向してくるオネイサンやオバチャンがカバンを反対側に持ち替えて進路変更したりされますもん。
ボックス席でカップ酒を窓際に置いて座っていると、たいてい避けられ相席されません。私は別に煙草を吸うわけでもなく、人恋しいわけではないのでグタグタ話しかけたりしませんからご安心を。ただ窓際席を確実に確保して車窓を楽しみ、エンジン音を肴に列車に乗っているだけであって、それよりズケズケ相席してきて、一言もなくカーテンをシャーッって閉めないでほしいんですけど…
ところで、鉄道員にとって酔っ払いの次に迷惑なのは、鉄ヲタかもしれない…(小声)
しなの7号
2017/03/01 20:49
しなの7号様、こんばんは。再コメント失礼致します。
以前にもコメントさせて頂いたとおもいますが、平成時代はどうも息苦しいです。特に教育現場では疲弊している教職員の方が増加しているとか。モンスターペアレントなる言葉も昭和にはありませんでしたね。『言った者勝ち』の世の中でしょうか。
先日レジで『ごぼうの値段が違う』と言ってきた客がいて、その対応をしたところ158円で表示してあったのに198円でレジ打たれた、と。実際ごぼう売り場でその客と確認しましたが、誰でもハッキリ分かる198円の表示が。つまり客の一方的な勘違いでしたが『分かりにくいわ』と吐き捨てられる始末。『言った者勝ち』で押し通す作戦だったのか?実際このようなクレーム、少なくありません。
まだ酔っ払いのオッサンの方が可愛げがあるかなぁ、なんて思えます。
はやたま速玉早玉
2017/03/02 00:19
はやたま速玉早玉様 こんにちは。
仕事していると、実にさまざまな(関わりたくもない)方々とお話する機会がありますね。私は鉄道員時代を書いていますが、いつの世でも、こちらは正当なのに理不尽なクレームがつくことはよくあるものと感じます。転職後も相当数の事例に出くわしています。クレーム絡みで直接会社のトップあてに「しなの7号をクビにしろ!」と電話されたりするようなかわいい事例とか、ここには書けないけれど今になってみれば面白おかしいことを腹いっぱい体験させていただきました。今どきは、対応が気に入らないと動画を拡散させたり、やり方が陰湿になってきたようで困ったものです。
しなの7号
2017/03/02 09:39
ごめんなさい。ごめんなさい。
車掌さん、ごめんなさい。そしてありがとうございました。
田舎行きの最終特急に乗り遅れた私を、チラっと見た車掌さん、「ダメですか」のひとことにブザー連打でドア再開閉していただきました。助かりました。
ブザー連打で思い出した次第です。
石橋そーけん
2017/03/04 13:38
石橋そーけん様
一瞬のタイミングが、ことを左右しますね。列車本数が少なかった国鉄時代には、よくあったことで、私もどれだけ似たようなケースを見たか数え切れませんが、分割民営化され列車本数が増えると、ピタッとそういうことがなくなりました。そのほかのサービス取扱や対応、車内放送にも車掌によるバラツキがなくなりました。それは等しいサービスと危険回避の意味でたいへんよいことなのでしょうが、車掌や駅員による個性がなくなりました。昔は粋な取り計らいとして褒められたことが、今ではよくないこととなったりします。30年前とは価値観まで変わったのだと思っています…
しなの7号
2017/03/04 16:46
お久し振りです(^^)

ほんと、起動直後の触車ほど心臓に悪いものはないですね(^_^;)
うちの運転取扱では急停車の合図はブザー乱打です。
また、出発合図はブザー式なので送信後、異常を現認したら即、車掌弁操作ののちブザー乱打です。
私鉄は各社、違うようですが国鉄やJRは越境乗務があった絡みからか?全国統一と聞いたことがあります(^^)
新小岩博士
2017/03/04 21:57
新小岩博士様 こんにちは。
広域にわたる乗務範囲があって会社ごとに取扱が異なるとよくないですね。国鉄時代、しなの号に乗務すると長野鉄道管理局内では、駅から車掌への「出発指示合図」が「−−」(名古屋や静岡鉄道管理局では「−」)というように違っていました。おまけに駅によってブザーだったり電鈴(ジリリン ジリリン)だったり。

自分がよく使うJRの電車列車でも出発合図がブザー式になって久しいです。ドア閉扉から起動までの時間が長くなって最初はじれったい感じを覚えました。
しなの7号
2017/03/05 09:41

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