【974】 国鉄時代の観光案内車内放送:「ひだ」(前篇)

「しなの」の車内放送に引き続いて、今回は国鉄時代に収録した高山本線「ひだ」の車内放送録音で飛騨路の旅にご案内したいと思います。ここにアップする特急「ひだ3号」は、名古屋と高山を結ぶ列車で、キハ80系気動車6両編成で運転されていました。

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乗務する車掌は、車掌長(チーフ)と専務車掌各1人ずつで、車内放送は主に車掌長がグリーン車の乗務員室に乗務して受け持ちました。専務車掌は最後部運転室でドア扱いも担当する「運転兼掌」でしたので、到着時など補助的に放送することはありました。この録音の収録時期は、私が専務車掌になって1年半ほど経った1985年12月で、そのとき私は予備勤務に指定され、ふだん勤務ローテーションに入っていない高山本線の列車に乗務する可能性がありました。
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私は岐阜県人でしたし高山本線へは撮り鉄で当時はマイカーでよく出かけましたから、地理的感覚はあるものの高山本線への乗務経験はわずかしかなく、いつでも自信を持って乗務できるようにしたいと思っていたのでした。ちょうどこの日、私は早い勤務明けで、いつも「しなの」号の乗務でお世話になっていた車掌長氏(これまでアップした「しなの」車内放送をされていた方)が「ひだ3号」に乗務される日でしたので、仕事の手順や取扱いの確認をするために、高山までプライベートで乗りに行ったのでした。その直後に「ひだ1号」に急遽乗務する機会があり、この録音をして予習したうえで乗車できたことは大変有意義でした。


 と、いうわけで、今回はYoutubeにアップした「ひだ3号」の名古屋発車時と、飛騨路に入る前の白川口あたりまでの高山本線内の車内放送について、その解説や補足などを書いておくことにします。

Youtubeの録音は、車内放送部分だけを編集してあります。車内録音のノーカット版ではありませんのでご承知おきください。


・録音日:1985年12月23日

・列車:東海道本線・高山本線「ひだ3号」

・運転区間:名古屋・高山

・今回の収録区間:名古屋~白川口付近

・収録時間:約14分45秒


◆名古屋駅発車時

 録音場所は普通車の車内ですが、この日は東海道新幹線のダイヤが乱れており、乗継客が少なく車内は閑散としていました。そのため乗客の声はほとんど入っていません。名古屋は晴れていましたが、飛騨地方では雪が舞うこの時期は、旅情をそそられる時期でもあります。現地の天気情報は、この車掌長氏のオリジナルです。

このころ、高山本線の特急「ひだ」は名古屋~高山間に3往復、名古屋~飛騨古川間に1往復が設定されており、以前あった金沢まで直通する「ひだ」は廃止されたあとでした。このころ高山本線経由で富山まで直通する特急は、名鉄から乗り入れる特急「北アルプス」1往復だけで、あとは急行列車しかありませんでした。
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業務用の時刻表には15秒単位で到着時刻と発車時刻が表記されています。このうち時刻が[ ]で括られている駅は、行違い待ちなど運転上の理由で停車しますが、客扱をしません。(ドアは開きません。「運転停車」といいます。) 発車時刻だけが表記されているのは通過する停車場で、そこに表記されているのは通過時刻です。また、市販の時刻表には記載されない行違い待ちのための信号場の時刻も記載されていますが、ひだ3号は、そのすべての信号場に停車しません。



◆岐阜到着と発車の放送~高山本線の案内
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岐阜では進行方向が変わります。その関係で5分停車するので、ホーム売店の位置が案内されます。今はホームに売店がないばかりか、大阪発着の「ひだ」との分割併合をする列車以外は、そんなに長い時間止まりません。

「表日本と裏日本を結んでおります」と放送されますが、今では、「裏日本」が差別的表現ということで「太平洋側と日本海側」と呼ぶようになりました。
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◆犬山城・貞照寺・日本ライン(鵜沼到着前~坂祝)

貞照寺については、犬山城ほど知られていないと思いますので、境内にあるこの案内板をアップしておきます。
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上の画像は山門を入ってから撮影しています。列車は貞照寺のすぐ前を通過しますので、当時は境内がよく見えたのですが、今では境内に茂った木々が成長してしまい、この車内放送で言われているようには見えなくなっています。下の画像は、貞照寺正面にある踏切から見た現況で、現在の車内からも、このようにしか見えません。
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「春の波濤」という言葉が出てまいりますが、これはNHKが1985年1月6日から12月15日に放送した23作目の大河ドラマでした。(出典:Wikipedia

この録音時期は、その放映が完結した直後でしたから、当時の貞照寺は話題性がある車窓スポットでした。

貞照寺を過ぎるとすぐ反対側(進行右側)に日本ラインが見えてきます。

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当時はライン下りと呼ばれる舟下りがあったので、列車からその様子が眺められることもあったのですが、現在はそのライン下りはありません。



◆飛水峡の甌穴(上麻生駅前後で放送)

急峻な谷間を通って行く高山本線の車窓での見所です。
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◆上麻生ダムほか(上麻生~白川口)

山深くなってきますが、白川口から中央西線の恵那まで直線距離で20㎞程度しか離れておらず、ここはまだ飛騨地方ではありません。後篇を来週日曜日Youtubeに音声を、その解説を翌月曜日、ブログにそれぞれアップします。


※録音につけた画像は、編集の都合上一部順番が逆転しています。また季節や時代が必ずしも録音時期とは一致しないのでご容赦ください。








この記事へのコメント

  • 鉄子おばさん

    お疲れ様です。さすがしなの7号様は勉強熱心で事前学習に余念がないですね。それに他人の技を参考になさるところはまさしく昭和の人間。昔は「人の技をみて盗め」なんて言われてましたよね。
    2019年04月08日 07:29
  • しなの7号

    鉄子おばさん様 こんばんは。
    いえいえ、小心者なので慣れない仕事に対しては不安です。やはりいつも仕事をされている方の仕事ぶりは、的確で無駄がないものですから、自主的な実地研修をしておけば安心して仕事ができます。沿線車内放送は、御覧のように文例があるものですが、その日一番の関心事は、各駅の信号機の位置やホームの状態のほか、駅員との連携について確認しておくことでした。思い込みや不慣れが原因で列車を遅らせたり責任事故を起こすといけませんから・・・というのはやっぱし昭和の人間ですかねえ(*'▽')?
    2019年04月08日 19:44
  • ヒデヨシ

    しなの7号様おはようございます
    なんにしても予習していると安心感が違いますね
    それにしてもわざわざ先輩常務の列車に乗車されるとはさすがです。
    岐阜県ご出身とはいえ木曽谷と飛騨では実際の距離は近いでしょうがその間をアルプスが遮り写真撮影をされてなかったら往き来は無かったであろうと思います。
    有数の山岳路線の高山線
    181系つばさの転属のタイミングで名古屋区に再配置出来なかったのかと悔やまれます。
    高山線特急の一角、DML17系列の北アルプスとの関連もあったのかもしれません
    2019年04月10日 06:40
  • しなの7号

    ヒデヨシ様 こんばんは。
    高山本線は乗務掛、列車掛、普通車掌時代は乗務範囲外だったこと、CTC区間で運転取扱に従事する駅員が配置された駅が限られていたこともあって、特急は「しなの」だけをお情け?で乗務していた名ばかりの専務車掌にとっては、予行演習をしておきたい気持ちでした。確認する信号機一つを間違えれば事故ですから、少なくとも通常業務に支障がないように心の準備をして本番に臨みたいものです。普通車掌になる直前にも武豊線に乗りに行ったり、見習とは別にプライベートで同期の者が乗務する列車に乗りに行ったりしていました。

    中央西線沿線在住者にとっては、高山本線と飯田線は、直線距離は近くても鉄道利用だと遠い存在でしたが、その感覚が変わったのは自家用車を持つようになったからで、飛騨・木曽・伊那の間をあみだくじのように結ぶ山岳道路で幾度も撮影に訪れるようになりました。

    「ひだ」の181系気動車や381系電車は夢と化しましたが、検修現場の方からいただいた生の一言からも、そうとう181系アレルギーがあったものとお見受けしました。下の記事で書いています。
    【754】年賀状7: 転職後
    https://shinano7gou.at.webry.info/201612/article_11.html
    2019年04月10日 18:00
  • NAO

    しなの7号様、おはようございます。
    車内放送を拝聴しました。高山本線は一度しか乗ったことがなく、勉強になることばかりです。普段からの積み重ねによるベテランぶりを感じました。日本ラインはウルトラセブンの舞台になって、アンヌ隊員が船で移動したシーンを視た覚えはありますが。
    業務用時刻表を拝見しますと、臨時(恐らく特急)列車運転日の番線?変更まで記載されているのですね。焼石駅他、カッコで括られた時刻には意味があるのでしょうか。北アルプスの接続案内は書き足されているのですね。
    いつも思うのですが、業務用時刻表はゴム印以外の駅名箇所は原稿は手書きなのでしょうか。そうだとすれば字がヘタな私、羨ましい限りです。職場ではパソコンではなく、所定のの用紙に記入する書類が幾つか存在するのですが、かつての硬券や駅補充券のように、有るだけのゴム印を使用しているのは私ぐらいです。
    2019年04月13日 10:50
  • しなの7号

    NAO様 こんにちは。
    日本ラインの車窓案内は、ふつうは画像を載せた放送文例の棒読みが多かったと思われますが、この方はこの文例を相当アレンジして、つまり研究して放送しておられたようです。

    予定臨運転日にはあらかじめ決められた運転手続(定期列車の着発線変更や時刻変更など)がつきものです。
    カッコ書きの駅は本文に書いたとおり運転停車です。車掌にとっては出発信号機の現示確認の上、出発合図をしなければなりませんから重要です。
    高山の北アルプス発車時刻は原稿から漏れていて加筆したものかと思います。それ以外に必要なことは自分で加筆することも多々ありました。
    駅名箇所の原稿は手書きのようです誰がいつ書くのか知りません。プロに発注したのか車掌区の誰かが書くのかも知りません。私の職場では61.11ダイヤ改正時にこうした時刻表の一部にワープロが使われ始めています。
    2019年04月13日 14:39

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